063 復習! ちょっと情報を整理しよう

「ユズってパワー極振りキャラなんスか?」

「極振りもなにも、割り振ってないよ」

というか、すっかり忘れてたよ。何もしなくても勝ててるし、割り振ったら勝てるようになる、なんて状況に遭遇していない。

「そういえば、僕も上げてないね」

「俺もだ」

「何でっスか⁉ まさかの縛りプレイで最強っておかしいでしょ!」

いや、最大の縛りプレイやってるの伊藤さんだから。あの人ガチで装備しないし、ステータス振ってないし、なんならレベル上げすらしていない。

何にせよ、ステータスを割り振るのはスキルとかもうちょっと覚えてからにしたい。剣のスキルとか、どうやったら覚えられるのか知りたいものだ。

「クエストでいくつか覚えれますよ? 役に立つかは別として」

な、なんだってーーーー⁉

そういえば、クエストとかあったんだっけ。無視してたというより、存在を忘れていた。

「中級者向けクエストか。探してなかったね」

「クエストといえば、クランホームの達成項目ってどうなってるんだっけ?」

ぬぐああああ! だめだ、やる事多すぎて忘れてる! ええと、他に何あったっけ? 何かまだ抜けてることないだろうか……?

「と、とりあえず新人も入ったし、やる事整理しようか。工房の方の様子も聞きたいし。なにか必要なものとかあるなら、情報共有はしておかないと」

「そうだな。第四階層を突破は他人に譲ってやっても良いかもしれないしな。優先順位どうするか決めようぜ」

ということで、生産組もあわせて、初のクラン方針会議をひらくことになった。

「まず、テーブルと椅子欲しいよね。会議用の」

「それは後で良いだろう……」

いきなり否定されたけど、まあ、家具は後でも良い。優先度の高いところから行こう。

「クランホームの達成項目って気にしてる人いる?」

「やってるけど、みんな気にしてなかったのか?」

「全然見てなかった……」

サカキは達成項目を見ながらスキルのレベルアップをしているらしい。既に十項目ほどを達成して報酬のメダルは貯まっていた。こちらは農業の二人と、錬金の二人も見ながら進めていくということでいい。

「で、第一階層の探索を終わらせるためには梯子が必要で、木工担当がほしい」

「探索そのものを進めるのは、矢の防御ができるようになったらでいいのかな?」

「そうだね。伊藤さん一人で進めてもらっても良いかもしれないけど、伊藤さん抜きでも進めるようにならないと意味無いでしょ?」

そう考えると、他の人たちが第四階層を突破できるのか不安になる。矢を防ぐ便利な魔法やスキルがないと、数十メートル先から矢でボコボコにされるだろう。

「そういえば、第二階層の池って一度も行ってないよね。あそこも何かあるんでしょ?」

「池ってあの中央のやつっスよね? あそこの敵、メチャメチャ強いっスよ」

「あ、行ったことあるんだ。どんな敵でるの?」

「ピラニアみたいな魚っス。攻略法とか絶対あると思うんスけど、何度かやっても全然ダメだったから諦めたっス」

ほうほう。貴重な情報だ。湖畔レイクサイドか訓練場で水中戦の練習というのも、やることの一つだろう。そういえば、水中専用の装備とかってあるんだろうか?

「鍛冶工房のレシピには無いな。皮革と織物は分からないが……」

確かに、潜水服とか足ヒレはあるかもしれないな。となると、早めに工房設置は済ませてしまいたい。だが、生産組のCPは生産に回してもらわないとだから、戦闘組はできるだけ余らせないようにCPをホームに入れていくようにしよう。

「話の流れが分からないんだけど……」

ポプラとカカオにはまだクランホームの拡張のことを教えていなかったか。CPを貯めていけばホームを拡張できる機能があり、次は千五百で工房枠一つ追加になることを説明しておく。

「そういう情報も公開しちゃっていいんじゃないっスか? 買い替えなくても大きくできるって分かったら、だいぶ家を買い易くなるっスよ」

なるほど。そういう考え方もあるな。カカオの意見はなかなか参考になる。

「あとやる事は、第一階層裏ボス周回して武器回収?」

「剣はあと何本必要なんだっけ? ええと、僕とヒイラギとツバキは持ってて……」

「いま、全部で六本かな。カカオとポプラにも一本ずつ渡したよね。わたしはもう一本欲しい」

「ワタシももう一本欲しいわ」

ポプラも二刀流に挑戦するつもり満々のようで、剣をもう一本所望する。鎧の方はサカキの武器材料として活用する。あれを着たくないというのはポプラもカカオも同じだった。

「他にも何かあったっけ?」

「工房なんだけどさ、陶芸は早めに欲しいかもしれない。どうにも道具が足りないっぽいの。鉄の鍋はサカキにお願いしてるんだけどさ、土鍋とか大甕ってどう考えても鍛冶じゃないでしょ?」

たしかに、それは陶芸だなあ。錬金に必要な道具の製作が必要になるとはまた面倒な。

「農具も色々作らないとならないし、たぶん、木工用の道具とかも必要になるぞ」

スコップとか小さな鋏は農園ファームに最初から備わっているけれど、伐採用のノコギリや大鎌なんかは作らないとないらしい。そもそも、トラクターを別途用意している時点で他の工房の道具類についても考えが及ぶべきだったのか。

「皮革と織物は優先順位低いままだし、陶芸作るのでわたしは構わないよ」

異論、反論もなく陶芸工房の設置は決まった。これは店の方に設置するため、倉庫から取り出してヤナギに渡してやる。陶芸の担当もヤナギになる予定だそうだ。

「一つ質問があるんスけど、良いっスか?」

「何?」

「何で工房持ってるんすか? クエストやってないんスよね?」

カカオは持っていないが、ネットの情報によると工房はクエスト報酬で得るらしい。ゲームマスターが驚いていたからわたしの取得方法は普通じゃないことは知っていたのだが、本来のルートについては全然調べもしていなかったな。

「別に隠し部屋じゃあないんだけどなあ……。探していれば見つけられるよ。第二階層のチビデブのアジトって分かる? 三百匹いるところ」

「チビデブ? えっと、あのデブリンのことっスか? 大量にでてくるところがあるって情報は見たことあるっスけど」

その先の情報が伏せられてるんじゃ意味ないじゃんよ。その奥の情報が大切なんだから。

「まあ、つまり、鍛冶、皮革、織物、厨房ははそこにあるってこと。途中の隠し扉から錬金工房と湖畔レイクサイドあるけど、その前にボスいるから、まあ普通は無理だね」

「でも、ユズは勝ったんすよね?」

伊藤さんなら余裕だろうし、セコイアたちでも勝つことはできるだろう。だが、他の人たちには無理だ。魔法を撃つ間隔がやたら短いし、こっちの魔法は防がれる。

「近接で突っ込むか、弓矢で対抗するかしかないんだよね。で、最後に自爆される」

防御力とHPが高ければ耐えきれるのかも知れないけれど、敵の強さから察するに、レベル二十程度ではどうにもならないと思う。適正レベルは、たぶん、第四階層突破する四十前後なのではないかと思う。

隠しボスの洞窟の方は、絶望的に勝ち目が薄い。弓矢対策ができていなければケンタウロス相手に為す術が無いし、鎧の方もかなりの強さだ。あれを倒して木工と陶芸の工房を取るのはまず無理だろう。

「そういえば、回復薬ポーションってできてるけど、要らないよね……?」

「それは要らないね。売ろうか」

「なんで? 回復薬ポーションは欲しいよ?」

ポプラやカカオはまだ感覚が違うようだ。わたしたちはダメージを受けないから回復薬ポーションなんて要らないのだ。治療魔法もあるし、回復薬ポーションを消費する必要はどこにもない。

「じゃあ、アンズとクルミは農業の達成項目やっていくね」

「オレは鍋を先に終わらせちまうか」

話し合いが終わると、生産組は工房へと戻っていく。わたしたちは、第一階層裏ボス周回からだ。

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