最終話 奇跡の復活

やあ、こんにちは!

私はパンツ、語り部パンツさ!

みんな、よろしく!

さて、地獄の勇者の水島は、無事にクマの化物、木村を退治したんだ。

「さあ、約束通り、木村を倒したぞ! 直ぐに現世に戻せ」

空を仰いで、勝利を叫ぶ水島。だが、返事が無い。ただの屍のようだ。

――ただの屍は水島だよ。

相変わらず酷いこと言うなあ。この神様は。

――そう言うな。だって、水島の死体、今、火葬されてる真っ最中だぞ? 生き返ってもまたすぐに焼け死ぬだけだ。

「何だよそれ! どうするんだよ! どうやって生き返るんだよ!」

神様の言葉に、水島が怒りを露にする。

――まあ、餅つけ、水島よ。心配するな。骨からでも復活できる。遺族はビックリするだろうけどな。

いやいやいや、お骨を拾っている最中に蘇ったら、吃驚どころじゃないよ!

火葬前に息を吹き返して吃驚仰天な例はあるけど、火葬後に復活したらもはや人間じゃないからね! マジで教祖になれるって!

――問題は他にもある。

「……なんだよ」

水島はもうあきれ果てたような表情だよ。

――木村の処置だ。今ここに来てるんだけどさ、どうしたら良いと思う?

「知らねえよ! 人間に戻して地獄に落とせば良いだろうが!」

――むう。気が進まぬが、勇者様がそう言うなら仕方が無い。

どうやらこの神様は、責任を水島に押し付けたいだけのようだ。

本当にどうにもならない神様だね! 地獄に落ちれば良いのに。

『心配するな、パンツ。そいつも地獄行きだ』

閻魔大王様の話では、デュニラハ神様は今回の問題の責任をとって、地獄の再建に汗水を流してもらうらしい。

悪いことをしたら、地獄に落ちる。うん。自業自得だね!

――パンツ、貴様! 俺を裏切るのか!

裏切るって失礼だな。私はただの語り部だし、誰の味方でもないですよ?

強いていうなら、面白い物語の味方さ!

「……あの、それで、僕はどうすれば」

水島が地獄で一人、途方に暮れている。

あ、犬たちはもうとっくに帰っていったよ!

――ああ、むこうは今、骨上げの最中だ。そろそろ行くか?

「早くしてくれ」

水島に急かされて、神様は復活の儀式を始めたよ。

そして。

「うわああああああ!」

「ば、化物ォォォォ!」

火葬場は絶叫に包まれた。

遺骨が光ったかと思ったら、一か所に集まり、その周囲に肉やら内臓やらが再生していくんだ。

気味が悪いったらありゃしない。

どっかのマンガみたいに、ドン、バン、って一瞬で復活するなら腰を抜かす程度なんだろうけど、少しずつ再生していくと不気味以外の何物でもない。

三分ほどして肉体の再生が終わったら、水島の復活の完了だ。

地獄から魂を呼び戻された水島が目を覚ます。

「ふふふはははは! 復活! 生き返ったぞォォォォ!」

素っ裸でガッツポーズを取る水島。

唖然としている遺族たち。と、火葬場の係員。

こうして水島は無事に生き返ったのだった。

これで、この物語は終わりです。

めでたし、めでたし。

そして、一年後。

田村の前に、野生のヒグマが立ちはだかっていた。

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